雨がアスファルトに滲んで、なぜか柔らかく感じる春の稲光を見つめながら、
人はただ一直線に舗装された道を歩くことは無いんだろうなということを不意に思う。
この地球は自然が創ったものだから、元々はでこぼことした砂の道で、
僕らが今日、こんなにも軽々しく目的地まで辿り着けるのは、
誰かが計画を立てて、大変に分かりやすく道をつくってくれたからだ。
人の道は、国道とは違っていつも曲がりくねっていて、
ふとした拍子に行き先を見失ってしまう。
明日は何が起こるのか誰にも検討がつかないから、
僕らは明確な道標を持つことはできないし、
さらに厄介なのは、こちらが君の歩むべき道ですよと手招きする道化師が交差点に佇んでいることだ。
そんなことなら、最初から立ち止まったままでいいし、
目的地なんていらない。
ただこの場所に立っていることだけで息切れしてしまうけれど、
なぜか手を繋いでくれる君がいて、僕はまた歩き出してしまう。
もしかしたら、君が差し出してくれる手のひらが、
僕の唯一の道標なのかもしれない。
道に迷ったら、君の手のひらを探すことにしよう。
目的地は辿り着いた場所がそうなんだと思うことにするよ。