さすが、すごい、そうなんですね。 僕が教えた相槌を、 君は内心うっすらと笑いながら投げかけてくる。 「さ」の行は、探すほどでもなく、 いくつかの心地良いフレーズで構成されていて、 幼い頃に慣れ親しんだ30cmの定規のよう…
改札を抜ける湿った空気に、なぜか君がすぐ近くにいるような感覚を覚えた。 鼓動よりも少し早い足を鳴らしながら、僕はせっかちにアリーナへと向かう。 前に出会った時よりも君が数段綺麗になったことを知っていた僕は、 その姿を目に…
過去はいつか消えるけど、 未来は必ず訪れるんだよな。 生きている限り。
人には、生きるか死ぬか、 2つに1つを、選ぶ力は元々備わっていて、 考える力、3つ目の点を、 生きて死ぬ意味を、 自分で生み出すことが、できるかどうか、 それが、強さを決めるんだろうな。 選ぶだけでは、弱いんだよ、人間は…
明け方の浅い眠りの中で主役を演じる君は、 僕の意思でどうにでもなるはずだというのに、 一定の距離を保って触れることができないまま遠く、 もどかしそうな笑みを浮かべていた。 いつも通りの時間に目覚めた僕は、 その微笑みの続…
丸みを帯びた四角いガラスの窓を覗き、シャッターを切る。 僕の窓に、君が映るのは何年ぶりだろうか。 視界より狭いファインダーは、いつも未来の光を切り取ってくれる。 集合写真の中ではいつも片隅にいた君が、 今では、ピントを合…
「あっ」という感嘆詞に、 再会の続きが繋がる音が聴こえた。 出来事が複数あれば、点が線となりストーリーが生まれる。 それが、君と二度目に会う理由だったのかもしれない。 君が見せた掌には、 生まれた証の複雑な線画が浮かんで…
「です…よね…?」 長い空白を埋めるには、 あまりに言葉が足りなさすぎた。 そして、 言葉が見当たらないことに、 どこか安心した僕自身、きっと君もそうだった。 君が太陽になった夏の日、 僕は月になることを選…
ふいに、来た道を辿りたくなる。 滅多に目にすることのない夕焼けが、 僕が歩いてきた道に長い影を伸ばす。 いつもより背伸びをした輪郭が、 前か、後ろか、 どちらが帰り道なのかを曖昧にする。 過去を振り返れば、沢山の経験が、…
過去を生きていると思った時点で、もうその人生は辞めたほうがいい。 例えば2年、 必死に息継ぎをしながら、 1mmの光も刺さない過去への執着の海を泳いでいるうちに、 新しい地上の地図を描きながら生きる人と、 4年の差が開…