未来の星を掴むんだという歌はたくさんあるけど、 僕らの夜空に、未来の光はひとつもない。 全ては過去に輝いた一瞬の連続が、 何光年の時間を経て、僕たちの元に届く。 夢を見て、いつか光り輝く星になるとき、 それ…
あなたがうっかり倒したものが、 全てに連鎖していく。 ドミノ倒しは遊戯だけど、 人の人生は遊びじゃないよ。 誰もが必死に生きているから、 終わりを愛おしく思うの。 賽を振るのは一度だけ。 人生は生きるか死ぬかの二択のゲー…
「また会いましょう」 またいつかの夜に偶然出会うような気がして、 僕はサヨナラを言わずに、夜の片隅に佇むフロアを後にした。 約束をすれば、ほんの一瞬、安心した気分になれる。 待ち合わせが会えない飢餓感を埋めてくれることも…
幼い頃に聞いていたヒット曲が朝の空気を振動させる。 鏡に写る疲れた顔を見ると、急に歳をとったような気分を覚えた。 知らない間に充電が切れそうになる電動歯ブラシの衰弱は、 僕らが誰かを愛することができる時間の…
珈琲が似合いますね、と、 お世辞にするにはどうでもいいような事をすれ違う人に囁かれ、 角砂糖の頼りない重さ程度には、いつもより嬉しい気分の夜だ。 ひとりで居ることが好きで、 珈琲を誰かと一緒に飲むなんて気が狂いそうになる…
東京に来て驚いたのは、地方出身者として扱われることだった。 僕が生まれた関西という「地方」は、 関西弁という「方言」を話す人たちということだ。 ご多聞に漏れず、僕は標準語を毛嫌いしていたし、 そのことは、父親が関西に縁が…
君はいつも物質的な何かを持たなくて、 好奇心の赴くままに、目を輝かせた。 こんな嘘ばかりの僕に、 「はらだくんはすごいね」と、雲ひとつない笑顔で声をかける。 たった一度だけ喧嘩をしたのは、 クラスで育てた一番大きなへちま…
最近、歌を聴いている途中で飛ばしてしまう悪い癖がついてしまった。 スマートフォンのタップは、色んなことを簡単にスキップできてしまうよね。 僕が人生の中で最も音楽に傾倒していた頃は、 隅々まで聴き逃さないよう…
「誰か」 抽象的な対象を指し示す漠然とした言葉だけど、 実は「誰か」とは、大抵において「自分自身」だ。 誰かの声がする、誰か僕を愛して、誰か。 そんな宛てのない言葉を、匿名の暗闇に向けて吐き捨…
慌ただしくすぎて行く日々にうんざりしながら、僕は何度も美容院に行くチャンスを逃していた。 正月をゆっくりと実家で過ごしたのが、まるで嘘のように記憶の中で霞む。 ようやくいつもの鏡の前に落ち着いたのは、3ヶ月振りのことだっ…