壊したがり

好きとか、愛おしい、という感情は、

きっと、火傷に似ている。

 

燃えて、焦がされ、

ちくちくと痛む痕になって、

皮膚の一部に住み着く魔物。

 

痛みの感覚は脳が受け取る信号の一種類でしかなくて、

そんなことよりも、

自分ではどうすることも出来ない傷跡の不自由さを、愛おしく感じてしまう。

 

 

時折、愛する対象を目の前で失いたい感情に襲われる。

大抵の物事や人は、思い通りに支配することができないからだ。

 

好きで、好きでどうしようもない、偏った愛情が芽生えると同時に、

独占欲や支配欲という役柄が登場人物として名を連ねるから、

深々と挨拶をして、契約を交わすことになる。

 

シナリオを書きたがる僕は、

自我と欲望でつくられた衣装を偏愛対象の君に着せてしまう。

そして、大抵において、僕はサイズを測らずに衣装をつくってしまうから、

思い通りの君にはならないんだ。

 

そんな君をコントロールすることができる唯一つの方法は、

僕の手で壊してしまうことなんだよ。

 

美しいものは、儚いほうがいい。

火傷の痕のように。

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