温かい湯船に浸かっていると、
いつかこの体温が冷め切って、
思考も感情も全て停止するということすら、
想像の選択肢から消えてしまう。
やがてその湯船は温度を下げ、
冷たいねと感じてはじめて、ぬくもりだったと気づく。
少し濁って手垢の浮いた水面を見つめながら、
たいして力も込めない指先で、追い焚きのボタンを押す。
幼いころは、その日のうちは足し湯、
日が変わるとお湯を張り替えていたから、
初めて一人暮らしをしたときは、便利なボタンがあるんだなと思ったなあ。
恋愛も、憧れも、追い焚きできたらいいのに。