ふいに、来た道を辿りたくなる。
滅多に目にすることのない夕焼けが、
僕が歩いてきた道に長い影を伸ばす。
いつもより背伸びをした輪郭が、
前か、後ろか、
どちらが帰り道なのかを曖昧にする。
過去を振り返れば、沢山の経験が、
歌となり、写真となり、
今では、遠く知らないデータベースに格納されている。
他人にタグを付けられることもあれば、
ある一場面が、驚異的な承認を得ることもある。
失敗も多い。
後悔することを抱え込んでしまう時間は誰にとっても辛い。
コピーの倍率を間違えたような僕の影の横には、
今では小さな、未来の等身大の我が子の影が並ぶ。
経験は、
いつも、新しい経験を生んでくれる。
目の前の景色がいつも新しく、
二度と同じ光景に出会えないのは、
きっと、歩いてきた道が、そう見せているのだろう。
二度と戻れない、
だからこそ、経験は貴重なものだ。
そして今日また夕陽はまた、
明日の朝を照らしてくれる。