親友

君はいつも物質的な何かを持たなくて、
好奇心の赴くままに、目を輝かせた。

こんな嘘ばかりの僕に、
「はらだくんはすごいね」と、雲ひとつない笑顔で声をかける。

たった一度だけ喧嘩をしたのは、
クラスで育てた一番大きなへちまをどちらが持ち帰るかということだけ。

いつもの帰り道の踏み切りで、僕が諦めたのを覚えてる。
だってそれは、君が休み時間ごとに成長を見守ってきたものだったから、
僕の功績にすることはやっぱりできなかった。

それでも君は、僕を悲しませないために、毎日へちまのことを話してくれたね。
まるで二人で育てたように、大切にしてくれた。

僕は君の10年の寿命を背負って生きてる。
その歳月に、残りの22年が続いている感覚だ。

時折、今でも問いかけるよ。
お金に換えることができる物質的価値しか求められない僕を、
君はまだ汚れないと言ってくれるだろうか。

僕が君に追いつきたくて必死に勉強したことを、
えらいねと言ってくれるだろうか。

埃にまみれて流す涙を、美しいと言うだろうね。
悔しいくらいに、頰を重力に逆らわせて、
誰にもできない笑顔を見せてくれるんだ。

その笑顔に僕は嘘をつけないから、
今もずっと苦しいままだ。

君の笑顔を真似できるまで、僕はきっと自分の笑顔に満足できない。

羽根が生えていたから、飛んでいったのかなって。
空にも土にも、なぜか面影を感じるんだ。

あの日の2日前にどうしたら戻れるんだろう。

僕は、君の名前をずっと呼び続けている。

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