「徐脈」という、通常の人よりも脈拍が少ない不整脈の一種がある。
僕が、それだ。
心臓から脳に向かって血液が運ばれる回数が少ないから、
血液が運んでくれる酸素の供給も、人より足りていないらしい。
そのせいで、瞬時の反応が鈍く、
感情的になったとしても、すぐに表に出すことは珍しい。
思い立ったらすぐ行動、というスローガンを是とする風潮も世の中にはあるが、
ある程度、空気の匂いを嗅いでから、
行動に移すくらいにはマイペースに感じられることもあると思う。
バンドや、アイドルグループ、もちろん企業も、
全てのコミュニティは、様々な人が集まって象られる。
秒針のように、細かく、苛立ちがちで、せっかちな人。
短針のように、ペースがミドルレンジで一定な人。
長針のように、ゆっくりと進んで大きな流れを生む人。
生き急いだり、出遅れたり、地道だったり。
歩くスピードは違えど、
それぞれの針が絡み合ってひとつの時間、時計になる。
「誰もが掛け替えのない存在である」ということを喩える表現は数多あるが、
僕はこの「時計」の考え方が一番しっくりきている。
それぞれの時間感覚をつなぎ合わせて、
元には戻せない時間を、明日へと進めていくこと。
時計の針を進めていく、
それが、人と人が支え合った時にできる唯一のことで、
誰かの時間の数え方を止めたり、無理に進めるようなことをしても、
時計が狂ってしまうだけなんだよ。