幼い頃に聞いていたヒット曲が朝の空気を振動させる。
鏡に写る疲れた顔を見ると、急に歳をとったような気分を覚えた。
知らない間に充電が切れそうになる電動歯ブラシの衰弱は、
僕らが誰かを愛することができる時間の残り少なさを示唆しているようだ。
恋と愛は別物ということはなんとなく知っていたけれど、
恋が愛情に変わるとき、執拗な「執着」は穏やかな「愛着」に形をかえる。
許すことができるようになる。
それだけのことなんだろうな。
そんなことを不意に思ったりする。
嘘も、偽りもすべてを見過ごさずに愛せるようになった時、
愛着はやがて、終着を迎えるだろう。
僕が君の前からいなくなったとしても、
君を守る酸素になって、血液の中を循環していたい。