約束の嘘

2017年3月24日

「また会いましょう」 またいつかの夜に偶然出会うような気がして、 僕はサヨナラを言わずに、夜の片隅に佇むフロアを後にした。 約束をすれば、ほんの一瞬、安心した気分になれる。 待ち合わせが会えない飢餓感を埋めてくれることも…

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託すこと、許すこと。

2017年3月22日

幼い頃に聞いていたヒット曲が朝の空気を振動させる。 鏡に写る疲れた顔を見ると、急に歳をとったような気分を覚えた。   知らない間に充電が切れそうになる電動歯ブラシの衰弱は、 僕らが誰かを愛することができる時間の…

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角砂糖の嫌悪感

2017年3月18日

珈琲が似合いますね、と、 お世辞にするにはどうでもいいような事をすれ違う人に囁かれ、 角砂糖の頼りない重さ程度には、いつもより嬉しい気分の夜だ。 ひとりで居ることが好きで、 珈琲を誰かと一緒に飲むなんて気が狂いそうになる…

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標準的な癖

2017年3月13日

東京に来て驚いたのは、地方出身者として扱われることだった。 僕が生まれた関西という「地方」は、 関西弁という「方言」を話す人たちということだ。 ご多聞に漏れず、僕は標準語を毛嫌いしていたし、 そのことは、父親が関西に縁が…

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親友

2017年3月9日

君はいつも物質的な何かを持たなくて、 好奇心の赴くままに、目を輝かせた。 こんな嘘ばかりの僕に、 「はらだくんはすごいね」と、雲ひとつない笑顔で声をかける。 たった一度だけ喧嘩をしたのは、 クラスで育てた一番大きなへちま…

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歌に既読を

2017年3月8日

最近、歌を聴いている途中で飛ばしてしまう悪い癖がついてしまった。 スマートフォンのタップは、色んなことを簡単にスキップできてしまうよね。   僕が人生の中で最も音楽に傾倒していた頃は、 隅々まで聴き逃さないよう…

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「誰か」の反対

2017年3月7日

「誰か」   抽象的な対象を指し示す漠然とした言葉だけど、 実は「誰か」とは、大抵において「自分自身」だ。   誰かの声がする、誰か僕を愛して、誰か。 そんな宛てのない言葉を、匿名の暗闇に向けて吐き捨…

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チェンジス

2017年3月6日

慌ただしくすぎて行く日々にうんざりしながら、僕は何度も美容院に行くチャンスを逃していた。 正月をゆっくりと実家で過ごしたのが、まるで嘘のように記憶の中で霞む。 ようやくいつもの鏡の前に落ち着いたのは、3ヶ月振りのことだっ…

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泥缶

2017年3月4日

僕は産まれて間もなく高熱を出した。 あまりに小さな身体に帯びた発熱は、母を不安にさせるには十分だった。 早生まれのせいもあって、幼い頃は体力が人より追いつかなかったし、 父の厳格な教えを守って、体力をつけるために、運動部…

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好きにならない方法

2017年3月3日

漠然とテレビを眺めながら同じことを呟いてしまったり、 腕を組むとき右腕が上じゃないと落ち着かないとか、 優越感より劣等感の方が心地いいと感じてしまう癖とか。 似てると思うことと、好きになることは、 時々同じ意味を持つこと…

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